SORCERIAN

FAILURES OF ONE WIZARD
『ある魔術師の失敗』

forever - フォーエバー Original - オリジナル

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Prologue 〜プロローグ〜

　青い渓谷のあいだを、一条の細い滝がつたうのが見える。
　その光景は、幻想的なまでに美しかった。どこからか鳥のさえずりも聞こえてくる。谷間からさしこむ暖かい陽光は、暗い坑道をくぐり抜けてきた一行を安らがせていた。
「ほぉ、これは絶景じゃな‥‥」
　魔術師アドロンは、感嘆した様子で呟いた。白髪交じりだが豊かな髪、そして立派な顎鬚が、宮廷付きの魔法使いとしての貫禄を十分に与えていた。
「へぇ、わたしら穴掘り人夫にとっちゃあ、仕事が終わった後ここに上がって一杯やるのが、ゆいつの楽しみでして」
　アドロンを案内していた坑夫の一人は、そう言って陽気そうに笑った。他の坑夫の顔も心なしか嬉しさで一杯のようだ。
扉の前に立つファイター　無理もない。ヴェスター山脈の中腹にある、ここデルニモ鉱山は、鉄鉱石で最大の産出量を誇っていたのだが、一年ばかり前からクズ鉱石しか出なくなっているからである。
　経営がなりたたなくなった鉱山頭は、たまりかねてペンタウァ王への嘆願書を出した。苦しい現状をただ書いただけの内容である。しかし『デルニモはペンタウァの屋台骨ともいえる。鉄鉱石が取れなくなったら国王も困るだろう。何とかしてくれるはずだ』という狙いがあったのは言うまでもない。
　狙いは見事に功を奏し、王は地の精霊を操る有能な魔法使いを送ってよこした。それが魔術師アドロンだったのである。
「‥‥しかしアドロン様、大丈夫なんですかい？　鉱石の埋蔵量を増やすだなんて、そんな夢みてぇなこと、とても信じられねえや」
「心配するでない。ワシの力をもってすれば容易いことだ。何しろこのアドロン、名高き至宝『琥珀球』の唯一の使い手なのだからの」
　そう言って彼が見せたのは黄味がかった大きな宝玉だった。半透明で中はガラスを砕いたようにキラキラしている。その煌きは、確かに尋常ならぬ力を感じさせた。
「これは地の精霊を呼び出し使役する力を秘めておる。地の産物である鉄鋼石を結晶化させるなど、造作も無いわい」
　坑夫たちはホッとした表情を見せた。これで麓の鉱山町に残した女房子供に苦しい生活をさせずに済む──そんな想いがありありと浮かんでいた。
　ただ、あまりにも自信たっぷりな物言いに、一抹の不安を感じたのも確かだったが‥‥。

　アドロンが坑道の最奥で結界を張ってから半日あまり。
　坑夫たちは、まんじりともせずにその帰りを待っていた。ときおり聞こえる呪文の声が不安と期待の混じった思いを増幅する。
「おっ、終わったみてぇだぞ」
　呪文の詠唱が終わって数刻ほどして、奥からアドロンが現れた。口々に首尾を問いながら坑夫たちは駆け寄ったが、すぐにアドロンが怪我を負っているのに気付く。
「‥‥すまん、失敗してしもうた」
　面目なさそうに呟くアドロンの言葉は、誰も聞いていなかった。
　坑道の奥からズリズリと何かが這いずり回る音が聞こえてくる。それも一つや二つではない。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ────っ！！」
　揺らめくカンテラの光に照らされて、現われたその集団は‥‥。

Prologue 〜プロローグ〜
青い渓谷のあいだを、一条の細い滝がつたうのが見える。　その光景は、幻想的なまでに美しかった。どこからか鳥のさえずりも聞こえてくる。谷間からさしこむ暖かい陽光は、暗い坑道をくぐり抜けてきた一行を安らがせていた。「ほぉ、これは絶景じゃな‥‥」　魔術師アドロンは、感嘆した様子で呟いた。白髪交じりだが豊かな髪、そして立派な顎鬚が、宮廷付きの魔法使いとしての貫禄を十分に与えていた。「へぇ、わたしら穴掘り人夫にとっちゃあ、仕事が終わった後ここに上がって一杯やるのが、ゆいつの楽しみでして」　アドロンを案内していた坑夫の一人は、そう言って陽気そうに笑った。他の坑夫の顔も心なしか嬉しさで一杯のようだ。　無理もない。ヴェスター山脈の中腹にある、ここデルニモ鉱山は、鉄鉱石で最大の産出量を誇っていたのだが、一年ばかり前からクズ鉱石しか出なくなっているからである。　経営がなりたたなくなった鉱山頭は、たまりかねてペンタウァ王への嘆願書を出した。苦しい現状をただ書いただけの内容である。しかし『デルニモはペンタウァの屋台骨ともいえる。鉄鉱石が取れなくなったら国王も困るだろう。何とかしてくれるはずだ』という狙いがあったのは言うまでもない。　狙いは見事に功を奏し、王は地の精霊を操る有能な魔法使いを送ってよこした。それが魔術師アドロンだったのである。「‥‥しかしアドロン様、大丈夫なんですかい？　鉱石の埋蔵量を増やすだなんて、そんな夢みてぇなこと、とても信じられねえや」「心配するでない。ワシの力をもってすれば容易いことだ。何しろこのアドロン、名高き至宝『琥珀球』の唯一の使い手なのだからの」　そう言って彼が見せたのは黄味がかった大きな宝玉だった。半透明で中はガラスを砕いたようにキラキラしている。その煌きは、確かに尋常ならぬ力を感じさせた。「これは地の精霊を呼び出し使役する力を秘めておる。地の産物である鉄鋼石を結晶化させるなど、造作も無いわい」　坑夫たちはホッとした表情を見せた。これで麓の鉱山町に残した女房子供に苦しい生活をさせずに済む──そんな想いがありありと浮かんでいた。　ただ、あまりにも自信たっぷりな物言いに、一抹の不安を感じたのも確かだったが‥‥。　アドロンが坑道の最奥で結界を張ってから半日あまり。　坑夫たちは、まんじりともせずにその帰りを待っていた。ときおり聞こえる呪文の声が不安と期待の混じった思いを増幅する。「おっ、終わったみてぇだぞ」　呪文の詠唱が終わって数刻ほどして、奥からアドロンが現れた。口々に首尾を問いながら坑夫たちは駆け寄ったが、すぐにアドロンが怪我を負っているのに気付く。「‥‥すまん、失敗してしもうた」　面目なさそうに呟くアドロンの言葉は、誰も聞いていなかった。　坑道の奥からズリズリと何かが這いずり回る音が聞こえてくる。それも一つや二つではない。「なんじゃこりゃぁぁぁぁ────っ！！」　揺らめくカンテラの光に照らされて、現われたその集団は‥‥。

〜冒険の目的〜

鉱山とアドロンデルニモは、ペンタウァで一番の産出量を誇る鉄鉱石の鉱山であった。しかしこの一年ほど、鉱山からはクズ鉱石しか出なくなり、困った鉱山頭は国王に嘆願書を出した。これを受けて、ペンタウァ王は地の精霊を使役する魔術師アドロンを派遣する。その魔法で、産出量を増大させようと考えたのである。しかしこのアドロン、確かに地の魔法においては第一人者といえるのだが、とにかく慌て者として有名だった。恐れていたとおり計画は失敗し、アドロンも鉱山の中で行方不明に‥‥。ソーサリアンたちは王の依頼を受けて、アドロン救出のため、人気の無くなった鉱山へ侵入する。

〜冒険の目的〜
デルニモは、ペンタウァで一番の産出量を誇る鉄鉱石の鉱山であった。しかしこの一年ほど、鉱山からはクズ鉱石しか出なくなり、困った鉱山頭は国王に嘆願書を出した。これを受けて、ペンタウァ王は地の精霊を使役する魔術師アドロンを派遣する。その魔法で、産出量を増大させようと考えたのである。しかしこのアドロン、確かに地の魔法においては第一人者といえるのだが、とにかく慌て者として有名だった。恐れていたとおり計画は失敗し、アドロンも鉱山の中で行方不明に‥‥。ソーサリアンたちは王の依頼を受けて、アドロン救出のため、人気の無くなった鉱山へ侵入する。

〜登場アイテム〜

【ツルハシ】[ PICKAX ]
　鋼鉄のツルハシ。鉄鉱石の採掘に使われていた
ものらしく、頑丈な造りをしている。薄い岩盤ならた
やすく堀り崩せるだろう。

【壷】[ JUG ]

　青い陶器の壺。日用品として使われていたもので、
高価なものではないようだ。水を汲みやすいよう、取
っ手が付けられている。

【白い石】[ WHITE STONE ]
　白い光沢を放つ小さな石。表面はなめらかだが、ところどころに封印の呪文が刻まれている。同じ形状のくぼみにはめると‥‥。

琥珀色の玉【琥珀色の玉】[ AMBER BALL]
　巨大な琥珀を砕いて造りあげた魔法球。「琥珀球」と
いう名前が付いており、大地を活性化させる働きを持っ
たマジックアイテムである。鉄鉱石の結晶化を促進する
ため、産出量の増加が期待されていた。

【王への詫び状】
[ LETTER TO PENTAWA KING ]
　魔術師アドロンが王へ奏上した親書。自らの失態を詫びたものらしい。もっともこれまでも何通か書かれたものらしいが‥‥。

〜登場モンスター〜

【ヴァンパイア・バット】
[ VAMPIRE BAT ]
　鉱山に通ずる洞窟に自生していた吸血コウモリ。人気の無くなった坑道を我がもの顔で飛び回っている。素早い動きが特徴である。

スウェッジ・ラット【スウェッジ・ラット】[ SEWERAGE RAT ]
　坑夫たちの食料をねらって住み着いた下水ネズミ。坑夫たちがいなくなったため、食料にありつけず狂暴化している。パーティの足元に集団で囓りついてくるだろう。

【ゴースト】[ GHOST ]
　鉱山で事故死した坑夫達の魂がさ迷っているもの。冷たい息吹を吹きかけてパーティを苦しめる。普通の攻撃はほとんど通用しないが、神聖なる魔法を浴びると、たちまち消滅する。

【トログロダイト】[ TOROGLODYTE ]
　穴小人。人の腰の高さ程度の背丈しかない。強い光を嫌う性質から普段は地底に潜んでいる。坑夫がいなくなったため、自分たちの領土を広げようと集団で侵出してきた。
ゾンビ

【ゾンビ】[ ZOMBIE ]
　地霊の暴走によって蘇った屍体の集団である。錆びたツルハシやシャベルを手に取って坑道の中を徘徊している。生きた人間を見ると、仲間を増やそうとして襲いかかってくる。

【ゾンビ】（水路にいるもの）
[ ZOMBIE ] (CHANNEL)
　ゾンビが水路の底を徘徊するようになっ
たもの。もともと腐食した身体を、さらにド
ロドロに溶かしながら近寄ってくるだろう。
ツルハシなどの武器は無くしているため、
それほど危険ではない。

ゾンビ(水路)

アース・エレメンタル【アース・エレメンタル】
[ EARTH ELEMENTAL ]
　アドロンが「琥珀球」を暴走させた結果、強大な力を手に入れた地霊である。「琥珀球」を核に実体化しており、そこからエネルギーを無尽蔵に取り出している。表面が固い岩盤で出来ているため、生半可な攻撃は通用しないだろう。

〜登場キャラクター〜

魔術師アドロン【魔術師アドロン】[ MAGE ADRON ]
　宮廷付きの魔法使い。地の元素をあやつる魔法に長けており、その道での第一人者とされている。しかし慌て者というか、おっちょこちょいというか、とにかく思慮に欠ける行動が多いため、いまいち信望を集めていないようだ。ただ、どうにも憎めない人物である。魔術師アドロン

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