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……大麦の穂が風に揺らいでいる。少し離れた丘の上では、同じ風を受けた風車が、ゆっくりと回っていた。春風は誰にでも平等だ。幾多の血の洗礼を受けている私達にでさえ、新緑の香りを運んでくれるのだから。目前に広がる田園ののどかさは、まるでそれが風景画なのだと錯覚させるほどであった。
麦畑を抜けると、私達の目的地である村が視界に入ってきた。もちろん、出迎えなどあろう筈がない。ひっそりと静まりかえった村には、人の気配が全く感じられなかった。春だというのに寒々とした周辺からは物音ひとつせず、聞こえてくるのは、私達を追いかけてきた春風のそよぐ音だけだった。
私は、いちばん近い民家にノックもせず入ってみた。家の中には誰ひとりいない。生活の匂いは感じられるものの、主の姿が見えぬ部屋は暗く、寂しかった。暖炉の日はあかあかと燃え続けていて、村を襲った恐怖が突然の事だったと、ほのかに暗示していた。
他の家を調べた仲間の見たものも、私が目にした光景とたいして違わなかった。どの家にも村人の姿は見あたらないのだが、つい先刻まで彼らがそこにいた、そんな気配がするという。そう感じさせるのは、テーブルに置かれた手つかずの食事だったり、干しかけの洗濯物だったり、家によって様々だった。
村人が避難しているのでは？そう考えた私達は、村はずれに残された廃坑に足を運んだ。その場を満たした闇をたいまつの炎で切り裂きながら、坑道を奥へ奥へと進んでゆく。どれほど歩いたろう？私はふと、前方の暗闇に気配を感じた。その時、先頭に立って進んでいた者が、急に歩みを止めたのだ。村人がいたのか、そう声をかけようとした私は、彼の足が、腕が、頭が、みるみるうちに石と化していくのを見た。メデューサだ！みんな逃げろ、そう叫んだ私の瞳に、妖しく鋭いふたつの眼光が飛び込んできた。やはりメデューサがいたのだ。薄れゆく意識の中で、私はその事を身を持って知ったのである……。
メデューサ。鬼女の上半身とみずちの下半身を持つ怪物である。それは、毒牙をむき出す毒蛇の髪と、全ての生き物を石化する眼光を放つ瞳とを、その体に有する地上最悪の魔物でもある。もし、その個体数が少なくなかったら、この世界はメデューサ以外の生き物の姿はなかっただろう。
ペンタウァのとある村に、メデューサが出現した。つまり、考えうる最悪の恐怖が村を襲ったのである。近隣の村や町の人々は我先に逃げ出し、突然の事態に対応できなかったその村からは、連絡が途絶えてしまった。国の命運をも左右しかねないこの重大事は、ペンタウァの王都にただちに伝えられた。
少数の精鋭でメデューサに対するのが最も良い策だろう、そう考えた国王はただちに精鋭部隊を村に派遣した。しかし、彼らは戻ってこなかった。彼らもまた、妖しきメデューサの眼光によって石にされてしまったのであろうか。こうなると、頼りになるのは、様々な戦いを経験している冒険者達だけだ……。
| * MIRROR SHIELD ・鏡の盾 メデューサの眼光は鏡によって跳ね返す事ができる。この盾なら充分、眼光を跳ね返せるが、それだけではらちがあかないのだ……。 |
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* ANTIDOTE ・中和剤 この中和剤は飲む物の血液を、どんな毒蛇の猛毒にも耐えられるよう、毒を中和する性質に変えてくれると言われている。 | |
| * GIANT BEETLE ・ジャイアントビートル メデューサの体から抜け落ちたウロコと、彼女の凄まじい邪念により生まれた、巨大なかぶと虫。 しなやかな鋭い角で相手をなぎ倒し、その上にのしかかって喉に噛みつくという。 | |
| * GILLMAN ・ギルマン 巨大な魚の体と人間の手足を持った、古き沼を守る半魚人である。沼の周囲に足を踏み入れるものがいると、水中から突如その姿を現し、手にたずさえた鋭利なモリで侵入者の体を突き刺すのだ。 |
 * GRIFFON ・グリフォン 上半身がワシ、下半身がライオンの姿の狂暴なモンスター。事件にあった村の上空を絶えず飛びかい、侵入者を発見すると急降下してくる。そして、その鋭い爪と牙を用いて彼らを撃退するのだ。 |
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| "MEDUSA" “メデューサ” 世界の誕生以来いる、鬼女の上半身と大蛇の下半身を持つモンスター。個体数が極めて少なく、この魔物が多くいたら、睨んだ相手を石化してしまう眼光で、この世界は石の世界になっていただろう。 |
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ソーサリアンのマニュアルを元に、文章・構成を編纂しています。
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