BARE KNUCKLE III / YUZO KOSHIRO, MOTOHIRO KAWASHIMA
ベア・ナックルIII／古代祐三・川島基宏

　アルファミュージックのG.M.O.レコードレーベルより発売された『ベア・ナックルIII』のオリジナルサウンドトラック。2007年に発売された『Yuzo Koshiro BEST COLLECTION Vol.2』には未収録曲を追加したこのCDの復刻版が収録されている。

　『ベア・ナックルIII 鉄拳聖典』は1994年3月にセガからメガドライブで発売された横スクロール格闘アクションゲーム。『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』の続編。新たに発見されたラクシンと言う放射性物質の爆発によって3万人以上の犠牲者を出したウッドオークシティ。時を同じくして失踪した軍事最高司令官のペトロフ将軍。シンジケートの関与が疑われる２つの事件を捜査する事になったアクセルとブレイズは、再び巨悪に挑む事となる…。今作のプレイヤーキャラはシリーズ共通の主人公アクセルとブレイズに、前作から参加しているサミー、そしてサイボーグ化したシンジケートの元研究者ザンの4人＋α。基本的なゲームシステムは前作までとほぼ同様であるが、全キャラにダッシュ機能が追加されており、必殺技は段階を経てパワーアップしていく。また、各々が得意とする武器を拾うとそれを使った必殺技が使えるようになっていて、より多彩な技を繰り出すことができるようになった。ラウンド間にはビジュアルシーンが入るようになって、ストーリーの進行を具体的に追える様になっている。ちなみに、敵にはアメコミ風のキャラクターが増えており、これまでのシリーズとはやや異質な雰囲気を漂わせている。今作はハードの末期に近いということもあってか他機種への移植はされておらず、前作まで出ていたゲームギア版やマスターシステム版（海外）は発売されていない。

　シリーズ前作までの音楽は、そのほとんどが古代祐三氏の手がけたものだったが、シリーズ3作目となる今作では、『ベア・ナックルII』で数曲を担当していた川島基宏氏が大きく参与しており、古代氏と川島氏がそれぞれほぼ半数を作曲している。今作で古代氏は、自身が制作した自動作曲プログラム「M98」を使用して楽曲を作っており、プログラムで自動生成された音色やフレーズに古代氏の才が組み合わさって、通常人間がイメージ出来ないようなサウンドを実現した。そこに、楽理科で現代音楽を研究していた川島氏の音楽が交わった事で、これまでのハウス色から変態デステクノ系ミュージックへと変貌し、極めて特異な音楽グルーヴを生み出すに至っている。なお、今作以降、古代氏と川島氏は共に一つの作品の楽曲を担当する事が多くなり、1995年の『卍PSY幽記』（psd／PC-9801）、1996年の『VATLVA』（Victor／セガサターン）、『ZORK I』（翔泳社／セガサターン）、1998年の『FOX JUNCTION』（トリップス／プレイステーション）、2006年『うえきの法則』（バンダイ／プレイステーション2）など、数多くのゲーム音楽で共演をしている。

　このCDでは、メガドライブ音源のオリジナルサウンドトラックを収録している。ただし、シリーズ共通の曲である「Round Clear」と「Game Over」の２曲、『BARE KNUCKLE』のオープニング曲のアレンジである「Ending」の１曲、そして、「Disco」「ROBO X」「BGM I」「BGM II」「BGM III」「BGM IV」の６曲は残念ながら未収録となっている。これらの楽曲は、2007年に復刻発売された『Yuzo Koshiro BEST COLLECTION Vol.2』と、2012年に発売されたベアナックルシリーズの総合オリジナルサントラ『BARE KNUCKLE ORIGINAL SOUND TRACK』にて聴く事が出来る。

【第11回日本ゲームミュージック大賞第12位】(電波新聞社)